第47回 府中文化村

原発は有害無益な失格電源である

2018.5.26開催)

 

今回の府中文化村は明治学院大学名誉教授である熊本一規先生をお呼びし、日本の原発についての最先端の問題を講演していただきました。

原発の話は 1年半前の30回府中文化村の講演で、菅直人元首相に講演していただいた「福島原発事故の本当のところ」以来となり、かつ今回は原子力発電それ自体どのような特徴があり、どのような問題があるのか。最先端の環境経済学者による「原発は有害無益な失格電源である」というテーマの理論的支柱をわかりやすく講演していただきました。

 

原子力発電はウランやプルトニウムといった元素の原子核を分裂させた際に発生する高温の熱で水蒸気を発生させ、その水蒸気でタービンを回転させて電気を起こします。この非自然的な現象は膨大な発電力で「原発による電気は最も安い」を最大の売りに1980年代から国が宣伝しており、これは日本国民が「安全に利用されるなら原発の電気は安い」というイメージを形成させました。

しかし、熊本先生によるとこの国の試算モデルには大きなカラクリがあると言います。

当時の試算モデル資料には「原子力」「一般水力」「石油火力」「石炭火力」すべてにおいて、送電端発電原価は原子力が最安値となっており、建設費が高い原発でも運転すれば発電原価が低コストであることを謳っています。ですが、燃料費が安いが建設費などの固定費がもともと高い原発は設備利用率で70%以上の推移がないと石油・石炭火力発電に同設備利用率帯の発電原価で安くならないのだそうです。

日本の電源ベストミックス論では原発は常に稼働し続けるベースロード電源に設定するしかなく、この地震大国である日本では原発の設備利用率70%という国の試算モデルを実現することは不可能であり、平均しても60%の設備利用率であった日本のこの試算モデル自体が間違っていたといえます。

このことから熊本先生は設備利用率が60%台のこの日本の現状であれば原発よりも「石炭・LNG(天然ガスでの発電)の方が火力が高いと結論付けます。

 

では火力発電なら良いかと問われたとき、まず第一に火力発電による二酸化炭素で温暖化や環境破壊の問題がでてきます。しかし、熊本先生によれば二酸化炭素の増加により気温上昇しているという温暖化二酸化炭素説は現在の研究からは疑わしく、それを踏まえた上で日本のベースロード電源としてはガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたガスコンパインドサイクル発電が一番適正なベースロード電源だと言います。

そもそも設備利用率が想定を大きく下回る原発をベースロード電源にしているため、再生エネルギーである太陽光や風力発電のコストが高くなっており、わざわざコスト大となっている原発をベースロード電源にしているため、火力発電や太陽光発電のコストを抑制し不経済化させている現状では再生エネルギーも進展し辛い状況にあるようです。

主にヨーロッパでは天候や気候に左右され不安定な太陽光・風力発電も諸外国との系統連結により、ある地域では不天候でもどこかの国で天候がよければそこで発電された電力を連結して輸入したり、太陽光やバイオガス、風力など多数の再生エネルギー発電設備を結合して一つの仮想的発電所として広範囲で扱うことで高度な再生エネルギーの標準化が図れたりするため、脱原発をしてもこれらの再生エネルギーで理論上賄うことは十分可能だと言います。

 

結論として原発は、稼働したが最後、廃棄物の問題やその固定費の高さから常に70%以上の設備利用率を達成するベースロード電源として稼働し続けなければ不経済であるが、そもそもこの日本ではその設備利用率の達成は不可能。しかし、火力発電など他の電源をベースロード電源にし、原発をピーク電源など一部のみで使用するのも不経済となる。この性質上日本では「失格電源」であり、原発をベースロード電源にすることにより再生可能エネルギーのコストを上げているという「有害」性も孕んでいる。まさしく「有害無益な失格電源」である原発を未だに環境省は原発の電気が安いと謳っているこの日本の矛盾。

これは日本の論点として私たちはしっかりと知識として持っておく必要があるのではないでしょうか。

 

熊本先生は環境経済・環境政策・環境法を研究分野とし、環境問題については学生時代に発生した水俣病問題や公害問題から研究を志したといいます。

そんな私たちもまだ記憶に新しい2011年の東日本大震災、これに付随する福島第一原発の津波による災害。

それによって露呈した東京電力のリスクマネジメントのずさんさ、日本の原発に対する説明のからくり。

今では汚染土などの中間貯蔵施設を福島県内に設定し、地権者に対して売却をせまり未だ全地権者との合意なく進んでいる状況。

こうした状況を経験した私たちは、「原発は危ないから」「また事故が起きたら」などの感情論ではなく環境・経済の視点から「何が問題なのか」「どうしていくべきか」を真剣に考えなければならないと感じました。

 

わたしたちが毎日使う電気、皆さんは本当に経済的にも環境的にも善い電気使っていますか

 

日本の原発とそれに付随する問題点。すべてをもう一度勉強し、

この電力自由化の波に乗って、この機会に新電力に切り替えることも考えても良いかもしれません。

 

○熊本一規 HPリンク

http://www.geocities.jp/kumamoto84/